2024.4.3
【第4回】:IaC運用管理ソリューション「Torque」とは
品質保証には、ソフトウェア品質問題の流出を防ぐ重要な責務があります。しかしながら、種々の課題に直面する昨今のQA現場において、その責務を果たすことは容易ではありません。こうした状況の脱却にあたり、QA現場の業務品質・生産性の向上が急務と言えます。
その達成に向けて有力な解決策となるのが、QA現場のプロセスにDX(デジタルトランスフォーメーション)の概念を適用する「品質保証DX」です。品質保証DXの実現にあたっては「品質計画」「開発・テスト環境」「テスト実行」の3点が重要となります。
前回は、開発・テスト環境に品質保証DXを適用する際の重要な技術として、「IaC」および「CI/CD」をご紹介しました。これらの詳細については、第3回の記事をご一読ください。
IaCやCI/CDをQA現場へ適用する際には、環境ソリューション「Torque(トルク)」が有力な選択肢です。第4回となる本記事では、Torqueの特長や解決可能な課題、関連する有力なソリューションをご紹介します。
環境ソリューション「Torque(トルク)」とは
「Torque」とは、米Quali Systems社が提供する、IaCによる環境構築を支援するソリューションです。IaCの仕組みを効率化・簡素化し、開発・テスト環境の最適な運用や管理、プロビジョニングを実現します。Torqueの特徴は、「IaC and Container Control Plane」と呼ばれる独自概念を採用している点です。
一般的なIaCでは、開発・テスト環境の設定をコードで記述したIaCファイルを、IaCプラットフォームごとに管理します。Torqueは、各IaCプラットフォームのIaCファイルを「Grain」として扱い、それらを適切に組み合わせた設計図「Blueprint」を作成。Blueprintにもとづきデプロイやコンテナ制御などを行うことで、環境構築の最適化を実現します。
Torqueが解決するIaCの課題
開発・テスト環境にIaCを適用するメリットは大きいものの、様々な課題に直面する開発・QA現場は少なくありません。Torqueは、こうしたIaCにおける課題の有力な解決策となります。Torqueの導入によって解決できるIaCの課題は、主に次の3つです。
IaCファイル管理の簡素化・効率化
IaCの大きな課題として、IaCファイルの管理が煩雑になりやすい点が挙げられます。一般的に、アプリケーションやIaCプラットフォーム、本番環境・ステージング環境・テスト環境といった環境種別に合わせたIaCファイルの管理が必要です。開発プロジェクトの成長とともにIaCファイル数の増加が避けられず、正確・スムーズな管理は難しくなります。
Torqueは、アプリケーションやIaCプラットフォーム、環境種別を問わず、IaCファイル管理の簡素化・効率化を可能にします。あらゆる環境の設計図となるBlueprintは環境単位で一元管理でき、容易な再利用が可能です。操作性の高い単一のUIにより環境ごとのBlueprintを管理することで、IaCファイル管理の負担軽減はもちろん、属人化の防止にもつながります。
マルチクラウド環境への対応
昨今では、複数クラウドサービスを組み合わせた「マルチクラウド環境」の上に成り立つソフトウェアが増えています。たとえば、ストレージは「AWS」でカバーし、コンピューティングは「Azure」でカバーする、といったケースです。各クラウドサービスをまたいだ適切なオーケストレーションが求められる分、マルチクラウド環境へのIaC適用は難易度が高くなります。
Torqueは、プラットフォームをまたいだIaCファイル管理をBlueprintに集約することで、マルチクラウド環境への対応を容易にします。環境設計図であるBlueprintには、複数クラウドサービスにおけるIaCファイルを柔軟に組み合わせることが可能です。開発・テスト環境の構築時には、Torqueが適切なオーケストレーションを行います。
また、開発者やテスト担当者はTorqueを介してBlueprintを展開することで、必要な環境を必要なタイミングで利用することができます。Blueprintを用いてオンデマンドの環境構築を行うため、環境構築されたシステムを複数のメンバーやプロジェクトで共有する必要がありません。これにより、開発・テスト環境の競合による業務遅延を防ぐことが可能です。
CI/CD環境へのIaC適用
IaCと同様に、複数プロセスを統合的に自動化する「CI/CD」も、品質保証DXの実現に欠かせません。IaCを適用するにあたっては、CI/CDパイプラインへの統合方法や相互連携も重要な検討事項となります。CI/CDの自動化に際してIaCに関する手動プロセスが生じるのでは、かえって生産性の低下につながりかねません。
その点において、TorqueにはCI/CDとの連携機能が充実しているため、CI/CDパイプラインを損なわず最適なIaC適用が可能となります。たとえば、「Jenkins」や「CircleCI」といったCI/CDツールとの連携機能を提供しています。CI/CDパイプライン上の必要なタイミングでBlueprintを介した環境構築を行えるため、IaCに伴う手動プロセスの発生を最小限に抑えることが可能です。
Torqueの費用対効果を最大化する「AQUADOCX」とは
Torqueは品質保証DXにおいて有力なソリューションであるものの、その導入には専門知識やスキルが求められます。品質計画に沿って最適な形でTorqueを適用できなければ、IaCやCI/CDによる業務品質・生産性の飛躍的な向上にはつながらない場合もあります。
Torqueの費用対効果を最大化するうえでは、アドックインターナショナルが提供する「AQUADOCX」が有力なソリューションとなります。AQUADOCXとは、QA現場にDXを軸にしたエコシステムを構築し、品質保証の飛躍的なQCD向上を図るサービスです。
IaCやCI/CDの導入前における計画や効果検証から導入支援、教育支援、導入後のサポートにいたるまで、開発・テスト環境の最適化に向けた幅広いサポートを提供。品質計画やCI/CDパイプラインとの統合も加味した最適なIaCおよびTorqueの導入を実現し、開発・QA現場の費用対効果の最大化に寄与します。
テストの実行における課題やポイントとは?
今回は、開発・テスト環境の最適化に向けた有力なソリューションであるTorqueをご紹介しました。
■第4回のポイント
- TorqueはIaCによる開発・テスト環境の最適化を支援するソリューション。
- TorqueによってIaCファイル管理の簡素化・効率化や、マルチクラウド環境・CI/CD環境への対応が可能。
- Torqueの費用対効果を最大化するソリューション「AQUADOCX」も有力。
これまでに、品質保証DXの実現に欠かせない「品質計画」や「開発・テスト環境」に関してお伝えしてきました。第5回となる次回は、もう1点の検討事項である「テスト実行」の課題やポイントについて解説します。
- 2024.6.18
- 【第7回】:非機能テストのベストプラクティス