ATS|テスト自動化

2023.7.20

【第5回】:Eggplantの適用ケース

「探索型×モデル」による自動テスト技法をひも解く

高いアジリティ(敏捷性)が求められる昨今のソフトウェア開発において、「自動テストの適用による生産性向上」は重要な課題です。その実現にあたり、急速に高度化するテクノロジーに解決策を見出すソフトウェア開発・QA現場が増えています。

なかでも「Eggplant」は、大手IT調査会社などによる高い評価を受け、多くの現場でも有力視されているテスト自動化ソリューションです。Eggplantは「探索型×モデル」という独自コンセプトを採用し、探索的テスト・モデルベーステストの利点をAI(人工知能)により最大化します。第4回までは、このコンセプトを軸としたEggplantの自動化手法について解説してきました。

Eggplantは、高品質な自動テストの実現に寄与する有力なソリューションといえます。しかしながら、開発プロセスに抜本的な変化をもたらすEggplantの現場への適用を想定することは容易ではありません。Eggplantの適用を成功につなげるうえでは、ケーススタディから知見を得ることや、適用効果を最大化するポイントを把握することが肝要です。

連載最終回となる本記事では、Eggplantの適用におけるケースやポイントをご紹介します。

Eggplantの適用ケース

Eggplantは医療、金融、小売、製造、教育など多岐にわたる業界向けソフトウェアの自動テストにおける採用実績を持ち、高いQCDの向上を実現しています。本節では、数あるEggplantの適用ケースの中から3業界の事例を抜粋してご紹介します。

医療:EMR(電子医療記録)のテストを自動化

いわゆる「電子カルテ」の一種であるEMRシステムを提供するA社では、昨今の在宅医療の拡大にともない急速なシステム拡大が求められました。在宅で患者データにアクセスできる仕組みの構築にあたっては、大規模なデータ統合が必要です。しかし、QAチームにおいて対応可能なテスターが1人しかおらず、それにともなうテストの負担は多大なものに。また、機密性の高い患者データを遠隔地から通信する性質上、自動テストにおける技術的なハードルは高いものでした。

こうした課題の解決策となったものがEggplantです。Eggplantは、RDP(Remote Desktop Protocol)やVNC(Virtual Network Computing)といったリモート技術により、クライアント端末とシステムの連携をともなうテストの自動化を可能にします。これにより、暗号化した医療画像の送受信などを含むE2Eテストの自動化を実現しました。結果としてA社は、患者のプライバシー・ユーザー体験を損なうことなく、EMRシステムのテストに費やす工数を飛躍的に削減することに成功したのです。

金融:決済システムのテストを自動化

B社は、多数の金融機関において取引の基盤となる決済システムを提供しています。ミスの許されない決済システムのなかでも、口座引き落としをともなうデビット決済機能には、セキュリティ要件の高いテストが求められます。しかし、システムと金融機関の双方でファイルの作成・送信を行う性質上、手動テストでは膨大なファイルの作成が必要です。とはいえ、複雑なトランザクション処理をともなうテストの自動化は困難なものでした。

こうした課題の解決策となったものがEggplantです。Eggplantによって、決済要求の検証に必要となるテストデータの作成、さらにはファイルの照合も自動化しました。これにより、手動テストで平均20%発生していたファイルの処理エラーを0%に抑制。処理エラーには最大30分の調査を要するため、これは大幅な生産性の向上を意味します。また、複数銀行を対象としたテストの並行実施が可能となり、飛躍的なカバレッジ向上も実現しました。

小売:POSシステムのテストを自動化

C社は、2,000を超える店舗に加えて流通・製造の施設も保有する、大規模なスーパーマーケットチェーンです。C社はユーザー体験の向上を図るべく、小売業に欠かせないPOS(販売時点情報管理)システムの刷新を検討していました。POSシステムの手動テストにともなう大きな負担を軽減するうえで、自動テストの適用は必須です。ただし、テスト環境にインストールが必要なテストツールは、セキュリティ上の懸念から避けたいという思いがありました。

こうした課題の解決策となったものがEggplantです。画面の表示制御をともなうPOSシステムのテストを、AIの高精度な画像認識技術を持つEggplantにより自動化しました。Eggplantは、何千ものテストケースを探索的に自動生成し、不具合を効率的に検出します。また、リモート技術によりテスト対象システムを非侵襲的に操作できるため、テスト環境へのインストールが基本的に不要です。

これによって手動テストの実施が不要となり、自動テストのモニタリングや分析に注力できるようになりました。結果として、2週間近く要していたPOSシステムのテスト工数を、わずか数日にまで短縮したのです。

Eggplantの適用におけるポイント

Eggplantは幅広い業界におけるソフトウェアの自動テストを可能にし、QCDの最大化に寄与します。ただし、Eggplantに限らずテスト自動化ソリューションの適用にあたっては経験者の存在が欠かせません。こうした担当者の教育には多くの工数・期間を要します。

特にEggplantにおいては、テスト計画や設計、環境構築、分析・フィードバックにいたるまで、テスト実行にとどまらない広範なプロセスの変革をともないます。自動化範囲が広いため高い費用対効果が期待できるものの、専門知識を持ち合わせた担当者がいない場合、導入にともない開発・QAチームの負担が増大するケースも少なくありません。

現場の負担を最小化し、Eggplantの優位性を最大限に享受するうえでは、各種支援サービスの活用を検討することがポイントとなります。なかでも有力な選択肢といえるのは、アドックインターナショナルが提供する「ADOC Testing Service (ATS) for Eggplant」サービスです。国内最多のEggplant認定資格技術者を有し、コンサルティングからPoCの支援、設計、実装、運用、教育まで現場のニーズに応じてワンストップで支援します。

ソフトウェア開発の変革は、革新的なテクノロジーで加速する

本連載では、自動テスト適用のソリューションであるEggplantの「探索型×モデル」という独自コンセプトに焦点を当てて、自動化手法やポイントをお伝えしました。

Eggplantは、テスト対象システムから導出したテストモデルに対して、AIがテストケースを自動で探索します。探索においてはテストケース選択の最適化により、不具合の検出やカバレッジの向上につながるテストケースを自動生成することが可能です。これにより、手動テスト担当者の負担を大幅に軽減し、カバレッジの飛躍的な向上を実現します。

一般に、自動テストの適用はリスクをともなう取り組みでもあります。適切なテスト自動化テクノロジーが現場に適用されない場合、高品質な自動テストのサイクルが構築されないばかりか、かえって生産性の低下につながりかねません。そのため自動テストの適用にあたっては、高品質なテスト自動化テクノロジーの選定が肝要です。

ビジネスとテクノロジーの距離が近づく現代のソフトウェア開発には、高品質な自動テストの適用を含む抜本的な変革が求められます。AIなどを含む革新的なテクノロジーの活用は、その実現にあたって欠かせないソリューションとなるのは間違いありません。

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